産婦人科医 ドクターまんまの北海道の歩き方

こんにちは。まんまでございます。

 

先月のブログで触れましたリベンジの地についてご報告いたします。

その場所とは「三毛別羆事件復元地」でございます。

 

三毛別羆事件」とは、1915年12月に現在の苫前町で発生した熊害のことで、開拓民7名の方がお亡くなりになり、3名の方が重傷を負いました。

 

その凄惨なまでの事件内容は

木村盛武『慟哭の谷』(文春文庫、1994年)

吉村昭羆嵐』(新潮文庫、1982年)

に詳しく記載されていますのでここでは触れませんが、わたくしがこの事件を知ったのは、高校2年生の冬に観た『リメインズ』という映画でした。

 

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リメインズ

当時、北海道を周遊した修学旅行から京都に戻り、北海道へのほのかな憧れが芽生え始めていたであろうちょうどそのとき、「北海道で実際にあった羆事件を題材とした映画がある」と聞き及び、これは是非と足を運びました。

映画の宣伝では「女性ばかりを襲った」と紹介されていたのと、オープニングにて、やはり女性が背後から近づいた羆に肩を噛まれて持ち上げられていた映像が脳裏に焼き付いています。

100%史実通りとまではいかなかったのと少し過剰気味の演出は仕方なかったとは思いますが、いずれにいたしましても、雄大な自然美に憧れていた高校生にとって、北海道の魅力というより羆の恐ろしさが刷り込まれたと思われます。

 

さて、その復元地でございますが、北海道の郊外としてはよくある見晴しのよい田園ロード的道道を、苫前町の中心部から20~30分程走らせた内陸部にあります(その道道は最終的には行き止まりになります)。

よく整備された、それでいて民家や対向車もほとんどない道道を走らせていると、そもそもなんでまたこんな山深いところを開拓していたのかなあと思います。

クルマでそれなりの速度を出して数十分ですから、開拓当時の人力ですと現在の苫前の中心部との往復には相当な時間を要したでしょうし…。

 

その道道ですが、2006年春に初めてこちらに訪問した際は途中でゲートが閉じ、行く手には残雪が道路を覆っていました。

除雪にて開通を早めるほどの需要がないということなのでしょうか、自然の雪解けを待っての開放のようで結局初回のトライは途中棄権ということになってしまいました。

 

それから15年、前述のごとく日本海オロロンラインを走っていたとき、ふと「三毛別羆事件復元地」を思い出し、盛夏の今なら季節的に通行は問題ないだろうと、再チャレンジしてみることにいたしました。

 

熊の親子をあしらった苫前町カントリーサインを見届け、国道232号から「とままえベアーロード」と呼ばれる道道1049号に入り、一路目的地を目指したまではよかったのですが…苫前の中心部から離れれば離れるほど、あたりは爽やかな田園風景から徐々に鬱蒼とした未開の原生林モードへと変化していき、少しずつ心拍が上昇していきました。

 

訪問当時北海道で羆事件が多発しているのも頻脈効果を助長したかもしれません。

 

ちょっとだけすっ飛ばし、愛機のエンジンサウンドで恐怖心をかき消そうと思いましたが、目的地まであと200m…という地点にいきなり現れたダートの道幅の狭さと天然の原生林トンネルによる薄暗さとで…いつ羆が出て来てもおかしくない、いやもしかしてそこに身を潜めているかも知れないという幻覚に襲われ、2回目の訪問も到達寸前で途中棄権してしまいました…。

 

あまりに怖くて写真も撮らずに遁走してしまったのですが、あの原生林の陰影と冷気が醸し出す羆感は相当だったかと。

 

この少し前、北海道の国道かどこかを走るクルマに威嚇するように飛びかかって来た羆の動画をニュースで見ていたというのが良くなかったですね…。

 

参考までに、ネットから拝借した「三毛別羆事件復元地」の写真を張り付けます。

 

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三毛別羆事件復元地

 

安全な場所で見るとなんてことはない、北海道にはよくある場所の一つに見えますが、

いざ現場に居ると、なぜか悪いことばかり考えてしまいます。

 

次回があれば、今度こそ到達を果たしたいですね。

その時はクマ除けグッズを持参して臨みたいと思います。