産婦人科医 ドクターまんまのクリニック探訪

こんにちは。まんまでございます。

 

妊娠に向けた治療は夫婦の協同作業ですし、妊娠そのものも卵子精子が1つになることで始まります。 

近年は、精子に関する情報に触れる機会が多くなっています。

そして、妊活中のご夫婦が来院された際、ご主人さまから「何か私に出来ることはありますか?」という質問を受けることが多々あります。

そこで、現在考えられている「精子に関する一般論」を下記にご紹介したいと存じます。

 

なお、当該ブログは以下の書籍、また、実際に石川先生のクリニックにお邪魔し、

石川先生の手術や診察を見学させていただく中で、石川先生から直接お伺いした内容を

参考にいたしております。

 

f:id:doctor-mamma:20210324214728p:plain

「男性不妊症」

 

❶熱刺激

精子は温度刺激、特に熱刺激にとても弱いことが知られています。

例えば、何らかの原因で高熱を出し数日寝込んでいるだけで、一時的に精子量が極端に少なくなることがあります。また、長時間の座位、熱い風呂やサウナ、タイトな下着の着用等による陰嚢温度の上昇は精巣機能にとって望ましくありません。    

 

❷禁欲期間

 妊娠するために最適な精子が得られる禁欲期間についてでございますが、一言「溜め過ぎはよくない」に尽きます。

禁欲期間が11日以上となると、精子運動率、正常形態精子数が共に低下します。また、精子の数が少なめの方(乏精子症;精子数<2000万/ml)は、禁欲期間が1日の場合に精子運動率が最もよくなり、正常形態精子数が多くなるという報告があります。

精子は75日周期で常に新しく作られていますので、射精を繰り返す事で精子がなくなるということはありません。

適度な間隔での射精(夫婦生活が出来るなら、なおよい)を心がける、というのがよいようです。  

 

❸食事

 精液の所見は食事の影響を受けるという報告があります。

それによりますと、いわゆる「質素倹約型」、つまり魚、果物、豆類、全粒粉のパン、玄米中心の食事の方が、「西洋型」つまり、肉、甘味、高カロリー飲料、スナック菓子中心の食事より精液所見が良くなるとのことです。

また、ω(オメガ)3脂肪酸を多く含む食品を摂ると精子運動率、正常形態精子数共に上昇するという報告もございます。その他、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛葉酸の摂取も効果的とのことです。   

いずれにしましても、バランスの良い食事を心がけたいものです。

 ※ ω(オメガ)3脂肪酸を多く含む食品    イワシ、サバ、サケ、タラ、ニシン、ブリ、カツオ、大豆、アブラナ、胡桃、ほうれん草、チンゲン菜等

 

❹タバコ

タバコが多くの疾患のリスク因子であることはよく知られていますが、精子へも悪影響を及ぼします。 

タバコは、精子濃度や運動率を10数%低下させ、また奇形率も増加することが知られています。さらに、精液中の白血球や活性酸素を増加させ、DNAへのダメージが増加します。

結局、タバコは赤ちゃんの突然死のリスクも上昇させますので、妊活を機に禁煙するのがベストかと存じます。 

 

 ❺肥満

BMIが高くなるにつれて、精液所見が悪くなるという報告があります。それによると、BMIが25以上で  「直進運動率」が低下し、BMIが30以上になると「精液量」、「精子濃度」そして「運動率」が低下します。    肥満は心臓、膝、腰への負担を増やし、生活習慣病を引き起こす可能性を飛躍的に高めます。 

健やかな毎日を送る…という点からも、適切な体重管理は重要です。

 

最後に、「過去に子種に恵まれているから自分の精子は問題ない、精液検査もする必要がない」…と考える男性が多く見受けられますが、精索静脈瘤による精液所見の悪化等、昔大丈夫だったから今も自分の精液は問題ない…ということは常にはあてはまらないと認識していただきたく存じます。

妊娠に向けた治療はご夫婦お二人で臨み、支え合いながら進めていくものであります。

また、妊娠に向けてなんらかの壁があるなら、それは女性だけでなく、男性サイドにも等しく直面する可能性がございます。

 

妊活は、まさに夫婦共同作業であるということを強調しておきたいです。