産婦人科医 ドクターまんまのクリニック探訪

 

こんにちは。まんまでございます。

 

今回はホルモンの一種、「プロラクチン」について説明させていただければと存じます。

 

 「プロラクチン(prolactin;以下PRL)」は、主に脳下垂体(下図参照)のプロラクチン分泌細胞という所で産生されますが、子宮筋層、子宮内膜及び妊娠中の卵膜からも作られます。その作用といたしましては乳汁分泌作用が中心ではありますが、他に乳腺の発達、黄体機能調節、精子形成、性行動への関与、免疫機能の調節など多彩な生理作用が知られています。

 

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脳下垂体

 

血中PRL濃度が基準値(検査試薬にもよりますが、だいたい6~30ng/ml)を超えた状態が高PRL血症ですが、産婦人科外来診療では高PRL血症に伴う排卵障害や黄体機能不全等の卵巣機能不全が問題となります。

 

高PRL血症の原因は様々ですが、特に重要なものとして下垂体腫瘍、甲状腺機能低下症及び薬剤性があります。他には特発性と言って原因が不明ということもあります(実際はこの『原因不明』ということが最も多い印象です)。 

また、PRLは生理的変化をきたしやすく、運動、睡眠、ストレス及び食事によって上昇することが知られています。

さらに、月経周期においては排卵期と黄体期中期で高値を示します。 

従いまして、当院ではPRLを測定する際、卵胞期初期(生理の2から5日目)に採血させて頂いております。

 

検査結果が100ng/ml以上の場合は下垂体腫瘍が疑われますので、すみやかに脳神経外科による精査を依頼致します。

甲状腺機能低下症及び薬剤性が疑われた際は原疾患の治療により高PRL血症の改善を図ります。

特に明らかな原因が認められない際は、ドパミン作動薬を投与することで高PRL血症の改善を図ります。

 

ドパミン作動薬投与により速やかに血中PRL値は低下し、およそ90%が3か月以内に排卵を認めると報告されています。そうしてカベルゴリン投薬により卵巣機能の改善を図り、早期の妊娠を目指すことになろうかと存じます。

なお、ドパミン作動薬の妊娠期間中及び長期内服におきましては安全性が比較的確立しており、妊娠中も安全に服用できますが、原因不明の高PRL血症の場合は服用する意義が乏しいので、ご妊娠が判明したら服用を中止するのが原則です(妊娠反応陽性時か、胎嚢確認後かといった止め時のタイミングは施設によってさまざまというのが実情でございます)。